ホロコーストに関わったノルウェー最大の罪
本作は、ノルウェーの平凡なユダヤ人家族の悲劇的な運命を描いた物語であるとともに、ホロコーストにノルウェー警察・市民らが加担していたノルウェー最大の罪を描いた知られざる衝撃の実話である。ベルグ収容所で強制労働を監視し、オスロの港に強制移送したのは同じノルウェー人であり、その結果、アウシュヴィッツ行きのドナウ号に乗船したノルウェー系ユダヤ人の多くがアウシュヴィッツでホロコーストの犠牲者となった。

そして、事件から70年経った2012年1月。当時のノルウェー・ストルテンベルグ首相は、ホロコーストにノルウェー警察や市民らが関与していたことを認め、政府として初めて公式に謝罪の表明を行った。

出演は、『獣は月夜に夢を見る』のヤーコブ・オフテブロ、『ソフィーの世界』のシルエ・ストルスティン、『ミレニアム』シリーズのミカリス・コウトソグイアナキスほか。監督は、『HARAJUKU』で国内外の高い評価を得たエイリーク・スヴェンソン。
平凡なユダヤ人家族の悲劇的運命を描く実話
第二次世界大戦中、ユダヤ人一家のブラウデ家はボクサーの息子チャールズが非ユダヤ人女性のラグンヒルと結婚し、幸せな日々を送っていた。だが、ナチス・ドイツがノルウェーに侵攻すると状況は一変する。ユダヤ人は身分証明書にユダヤ人の印「J」のスタンプが押され、チャールズら男性はベルグ収容所へと連れて行かれ、厳しい監視のもと強制労働を強いられた。一方、取り残された母とチャールズの妻は夫や息子たちの帰りを待ちながらも、資産を接収されるなど徐々に圧力を強めてくる政府に身の危険を感じ、スウェーデンへの逃亡も準備していた。
しかし、1942年11月、ノルウェー秘密国家警察・クヌート・ロッドの指揮のもと、警官とタクシー運転手らによって、ノルウェーに住むユダヤ人全員がオスロ港へと強制移送された。何も知らずに港に連れてこられた人々の前に待ち構えていたのは、アウシュヴィッツへと向かう船“ドナウ号”だったー。
ヤーコブ・オフテブロ/チャールズ・ブラウデ 
1986年1月12日、ノルウェー・オスロ生まれ。07年にノルウェー舞台芸術アカデミーを卒業後、デンマーク国立舞台芸術アカデミーに入学。その後、オスカーにもノミネートされた映画『コン・ティキ』(12)に出演。13年にクヌート・ハムスン原作の『Victoria』のヨハネス役で名を知られる。翌14年には、デンマーク史上最大の予算で製作された戦争ドラマ「1864」で主演を務める。同年、ベルリン国際映画祭の有望な若手俳優に送られるシューティングスター賞を受賞。以来、ノルウェー、デンマーク、スウェーデンの映画・TV作品に数多く出演。主な作品に、『リリーハマー』(12/Netflix)、『獣は月夜に夢を見る』(14)、『ラスト・キング 王家の血を守りし勇者たち』(16)、『Mesteren』(17)、「バイキング」(20/Netflix)、「Krudttønden」(20)がある。18年の『Mesteren』では、デンマーク映画賞で最優秀助演男優賞を獲得。最新作に、ノオミ・ラパス主演の『Black Crab』(22)がある。 
ピーヤ・ハルヴォルセン/サラ・ブラウデ
1965年、ノルウェー生まれ。93年にストックホルムの演劇アカデミーを卒業後、ノルウェー、スウェーデンのTVドラマを中心に活躍。97年の「Skärgårdsdoktorn」はスウェーデンで高い視聴率で人気を博し、「Äkta människor」(12-13)では、重要な役を演じ、多くの国で配信されている。主な映画出演作に、『ストックホルム・ストーリー』(13)、『アンシンカブル 襲来』(18)がある。
ミカリス・コウトソグイアナキス/ベンゼル・ブラウデ<父>
1959年11月22日、ギリシャ・クレタ島生まれ。ストックホルム大学で学んだ後に俳優としてのキャリアをスタート。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(09)の「ミレニアム」シリーズに、ドラガン・アルマンスキー役で出演。そのほか、TVを中心に、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの作品に出演。
クリスティン・クヤトゥ・ソープ/ラグンヒル
1992年、ノルウェー・オスロ生まれ。高い芸術教育を受けるためにコペンハーゲンに移住。デンマーク王立美術アカデミーを卒業後、短編映画やデンマークやノルウェーのTVドラマなどに出演。主な出演作に、「Doggystyle」(18)、「空白」(19)がある。デンマークのTVシリーズ「Noget om EMMA」(20)では、主要キャストを務め、21年公開予定の『Ninjababy』で初主演を飾る。現在、俳優以外に児童文学作家としての顔を持ち、20年にデビュー作「Help the Tiny Creatures」を発表。
シルエ・ストルスティン/へレーン・ブラウデ 
1984年3月30日、ノルウェー・オスロ生まれ。08年に、オスロ国立芸術アカデミーを卒業。演劇、映画、TVと幅広く活躍。『ソフィーの世界』(99)のソフィー役でデビュー。最新作に、『Thomas i multiverset』(21)がある。
ニコライ・クレーべ・ブロック/ベルグ収容所 所長
1975年11月14日、ノルウェー・バールム生まれ。02年のTVドラマ「Lekestue」の主要キャストを演じ、その名を知られる。主な出演作に、『ナチスが最も恐れた男』(08)、『エッセンシャル・キリング』(10)、『ラグナロク オーディン神話伝説』(13)、『サバイバル・ランド』(14)がある。本作のエイリーク・スヴェンソン監督の作品『HARAJUKU』(18)にも出演している。
アンデルシュ・ダニエルセン・リー/クヌート・ロッド<秘密国家警察 副本部長>
1979年1月1日、ノルウェー・オスロ生まれ。11歳の時、『Herman』(90)で映画デビュー。ヨアキム・トリアー監督の『オスロ、8月31日』(11)で主演を務め、国内外で高い評価を受ける。ポール・グリーングラス監督の『7月22日』(18/Netflix)では、ウトヤ島で無差別殺人を行う犯人役を演じた。その他の出演作に、『リプライズ』(06)、『サマーフィーリング』(15)、『パーソナル・ショッパー』(16)、『フォース・プラネット』(16)がある。
監督・脚本 ペテル・ベブヤク
1983年10月19日、ノルウェー生まれ。ノルウェーの映画学校を卒業後、12年の『En som deg』で長編映画デビュー。2作目の『Natt til 17』(14)は、ノルウェーのアマンダ賞にノミネートされた。15年からは続けて、TVドラマ「Mysteriet PåSommerbåten』(15)、『Heimebane』(18)、『Unge lovende』(15-18)を監督。日本のアニメに憧れる少女を描いた『HARAJUKU』は、アマンダ賞で7部門にノミネートし、録音賞、音響効果賞の2部門を受賞したほか、国内外で高い評価を受け、トーキョーノーザンライツフェスティバル2020でも上映された。自国ノルウェーの過去の罪を描いた本作は、賛否の意見があったものの、20年のクリスマスに公開すると興行成績1位を記録した。
この映画を監督するきっかけ、経緯を教えてください。
本作は、家族を引き離されたブラウデ家に焦点を当てて描かれたマルテ・ミシュレのノンフィクションの原作を基にしています。この出来事はたった数十年前に、自分の地元の街の近くで起きたにも関わらず、私はこういった出来事について無知であった事に気づかされ、当時のノルウェー人がユダヤ人に対して行った行動に対する強い想いが沸き起こりました。自分がこの作品を映像化しないのであれば、映画そのものを作り続ける意味はないのではないかと思ったほどです。
自国ノルウェーの過去のあやまちを描くにあたり、難しかった点や気をつけた点はありますか?また、ノルウェーでの反応はいかがでしたでか?
私は比較的若い世代で、上の世代の方々と比べて一連の出来事に対してより客観的に好奇心と広い視野を持ってこの題材に取り組めたと思います。この作品が取り上げた題材は自国ノルウェー内でも多くの論争があり、作中では歴史学者たちによって語られている内容やその他重要資料など、物語の真実の部分について細心の注意を払いました。その結果、本作はノルウェーの観客、批評家、歴史学者たちから好評を得ることができました。同時に、多くの人たちからはノルウェー人たちを無実な英雄として描くのではなく、ほかの視点から描く作品が増えても良い頃だろうという声が上がりました。
原作を映画化にあたり変更した点や、強調したシーンはありますか?
私は実際に起きた出来事、特に本作が基となっている内容について誠実でありたいと思いました。もちろんいくつかの場面は観客にとってわかりやすく感情移入しやすいように構成しました。本作では、大きな政治的内容や戦争映画の‘お決まり’な内容ではなく、1つの家族、そして登場人物一人ひとりの視点に近いものにしました。観客にはノルウェーで実際起こったホロコーストの被害者に共感できるようにしたかったんです。何ひとつ悪いことをしていない無実の普通の人々が自宅から引きずり出され、逮捕され、移送の果てに殺害されました。この一連の出来事に加担していたのが同じノルウェーの人たちです。制作にあたり非常に大事だったのは、リサーチで訪れたアウシュヴィッツでした。ガイドの方がノルウェー系ユダヤ人が殺害された収容所の場所に案内してくれました。彼らは移送が始まって、わずか数日後に殺害されました。
ホロコーストをテーマにした作品や、同時代に描いた作品はたくさんありますが、参考にされた作品はありますか?
映画を撮影する前にたくさんの作品をみて、インスピレーションを受けました。しかし、私たちは独自の切り口で物語を語らなければいけないと思いました。特に『戦場のピアニスト』に出てくるいくつかの場面、特に家族間の議論や彼らのジレンマは本作にも通じる部分があると思いますが、本作での語り口はそれよりも現代的かもしれません。私は歴史上の出来事だからといって過去形で語らず、常に現在形で語ることを意識していました。
約80年経った今も、世界では迫害や差別が起こっていますが、このような現状をどう感じていますか?
これについては何度も制作中によぎり、今我々が生きている世界との類似点について考えました。希望や夢、家族や愛する人を持った普通の人たちなのに、すべてを奪われてしまった人たちが今もいます。ホロコーストと直接的に比較できませんが、私たちは人権を侵害する現代の残虐行為に対して敏感である責任があると思います。たとえそれが自分たちや家の近くで行われていようと、それがはるか遠く地球の反対側で行われていようと。
コロナの前後で何か心境、制作に変化はありますか?
もちろんです。私たちはみな新型コロナで疲弊しています。私自身、以前の人が溢れかえったバーや友人たちとのハグ、劇場で隣同士に座る、など恋しいものはたくさんあります。ただ世界を見るとノルウェーよりも酷い状況で苦しんでいる人たちがいます。このパンデミックを乗り越え、私は友人、家族、同僚といった近しい人達だけでなく、世界規模で人と人が大きな意味で近くなれることを願っています。なぜなら今地球や人類はとても繊細で壊れやすくなっており、それを当たり前として受け入れてはいけないからです。私はすべての国々が手を取り合い、助けを必要としている人たちを助けることができればと願っています。とりわけワクチンについては経済強者が支配するのではなく各国に平等に行き渡って欲しいです。
被害者が、加害者となる――
それが正当化されてしまう戦争という名の不条理。
普通の人々がユダヤ人迫害に加担する。目を背けたくなる歴史を凝視し、不都合な自画像をしっかりと映画にする。
自分は加害者なのだと自覚する。観ながら思う。僕が生まれたこの国でこんな映画はできるのか。いや作らねばならない。
だから大嫌いなフレーズを最後に敢えて使う。勇気をもらった。必見だ。
普通の市民がノルウェーからアウシュヴィッツへ隣人を送り込んだ悲しい記憶。
隠蔽したい過去は誰にでも、どこの国にもある。
2度と戦争をしないために観ておきたい衝撃的映画!
多様性という言葉をこれほど見た夏はなかっただろう。だからこそ、もう一度考えたいのだ。自分が多様性の本質を理解しているか。性別や国籍、民族によって差別をしていないか。この映画はそれを深く考えるきっかけになる。
歴史の重く暗い時間の中で、心を寄せ合って生きた人たちの命のあたたかさが、美しく抑制された画面の中で、希望のともしびのように感じられた。決して忘れないためにも、この作品を心に刻みたい。
ドイツ本国のみならず、ナチスが占領した国々でもホロコーストの犯罪があった。
この映画が描くノルウェーの例は、人類の蛮行を再認識させる。衝撃の告発映画だ。
あり得ない辛さのドン底から 跳ね返ってくる人間の笑顔。 笑い声に生きるという意味とエネルギーをpresentされた。
こんなに苦しく切ない辛さは、絶対に絶対に要らない!!
ノルウェーのユダヤ人をアウシュビッツに送っていたのはノルウェー人だったという衝撃。家族を思いやる愛が“隣人”によって引き裂かれてゆく「ノルウェーの闇」を描く製作者たちの覚悟に心震えずにはいられない。
負の歴史を今もまだ描き続ける。欧州の社会的成熟はこういう歴史と向き合う態度と明らかに関係している。教科書では遠い歴史が目の前に現れ、それを体験させられる。俳優と 演出の質が高くその体験のリアルに脱帽した。
Jakob Oftebro
ヤーコブ・オフテブロ
Pia Halvorsen
ピーヤ・ハルヴォルセン
Michalis Koutsogiannakis
ミカリス・コウトソグイアナキス
Kristine Kujath Thorp
クリスティン・クヤトゥ・ソープ
Silje Storstein
シルエ・ストルスティン
Nicolai Cleve Broch
ニコライ・クレーべ・ブロック
Carl Martin Eggesbø
カール・マルティン・エッゲスボ
Eilif Hartwig
エイリフ・ハートウィグ
Anders Danielsen Lie
アンデレシュ・ダニエルセン・リー
André Sørum
アンドレ・セルム
Axel Bøyum
アクセル・ボーユム
Mads Ousdal
マッズ・オウスダル
Directed by Eirik Svensson
監督:エイリーク・スヴェンソン
Produced by Martin Sundland
         Therese Bøhn
         Catrin Gundersen
製作:マーティン・サンドランド
         テレッセ・ボーフム
         カトリン・グンデルセン
Screenplay by Harald Rosenløw
         Eeg,Lars Gudmestad
脚本:ハラール・ローセンローヴ=エーグ
         ラース・ギュドゥメスタッド
Based on the book «Den største forbrytelsen» written by
         Marte Michelet
原作:「Den største forbrytelsen」
         マルテ・ミシュレ 著
Director of Photography Karl Erik Brøndbo
撮影:カール・エリク・ブロンドボ
VFX Supervisor Lars Erik Hansen
VFX:ラース・エリク・ハンセン
Edited by Christian Siebenherz
         Elise Solberg
編集:クリスチアン・シーベンヘルツ
         エリセ・ソルベルグ
Sound Design by Christian Schaanning
音響:クリスチアン・シャニング
Music by Johan Söderqvist
音楽:ヨハン・セデルクヴィスト
2020年/126分/カラー/ビスタ/5.1ch/PG12/ノルウェー語・ドイツ語/ノルウェー/日本語字幕:高橋澄
原題:Den største forbrytelsen 英題:Betrayed 後援:ノルウェー大使館
配給:STAR CHANNEL MOVIES ©2020 FANTEFILM FIKSJON AS. ALL RIGHTS RESERVED.